東京の郷土料理といわれる、もんじゃ焼き。
東京の月島エリアは、多くのもんじゃ焼き店が集まっており、連日多くの観光客で賑わいます。
子供向けのお菓子が発祥とされるもんじゃ焼きの具材は、もともとはいたってシンプル。水で溶いた小麦粉に味を付けて、鉄板で焼いて食べるというものでした。

しかし、もんじゃ焼きの知名度が増すにつれ、味付も具材もバリエーションが豊富に。
気軽に楽しめる点は、今も昔も変わりませんが、もんじゃ焼きの魅力に迫ると、意外と奥深い世界であることが分かります。
もんじゃ焼きの魅力、歴史について紹介してもらうのは、『好美家』と『月島もんじゃ たまとや 月島本店』の2店舗。ともに月島エリアを代表する人気店です。

(左)好美家、(右)月島もんじゃ たまとや 月島本店
もんじゃ焼きとは:月島で発展した東京の郷土料理
もんじゃ焼きの歴史は古く、江戸時代までさかのぼります。
当時は、もんじゃ焼きではなく文字焼きと呼ばれており、子供向けのお菓子である駄菓子として親しまれていたのだそう。
『月島もんじゃ たまとや 月島本店』の岸店長は、もんじゃ焼きのルーツとされている文字焼きについて、こう説明します。

うどん粉や小麦粉を水で溶き、鉄板の上で絵や文字を書いていたのが、文字焼です。当時は、醤油で味を付けたり、甘い黒蜜をかけたりして食べられていたといいます。
その後、時代が流れ昭和の時代になっても、子供向けのお菓子を専門に取り扱う駄菓子店で、もんじゃ焼きは提供されるように。
駄菓子として親しまれていたこともまた、月島エリアにもんじゃ焼き店が集まっている理由の1つだといいます。

月島はもともと工場で働く人たちが多く住むエリアでした。働く人が増えると、子供たちも増えていきます。子供が多い地域のため駄菓子店も多くあり、もんじゃ焼き店が多い現在の月島エリアの特徴につながったのだと思います。
では、もんじゃ焼きが駄菓子としてではなく、大人も楽しめる料理として広く知られるようになったのはいつ頃なのでしょうか。
月島エリアにあるもんじゃ焼き店の中でも、長い歴史を誇る『好美家』の店長である村田さんは、こう語ります。

お好み焼きともんじゃ焼きを、どちらも提供する店は昔からありました。昔は、どちらかというとお好み焼き中心だったと聞いています。そこから徐々に、具材だったり、食べ方だったりが増えていったんじゃないかと思います。
また、月島エリアで、お好み焼きよりももんじゃ焼きの知名度のほうが高くなった転機の1つに、メディアの存在があるのだそう。

昔、月島エリアにあった店舗の1つが、テレビでもんじゃ焼きを広くアピールしたことがきっかけだと聞いています。だいたい1980年代、1990年代頃です。
そして、2つ目の転機となる、もんじゃ焼きの街としての月島エリアを決定付けたのが、月島駅の開通です。

昔は、銀座から歩いてくるしか、月島エリアまで来る方法がありませんでした。月島駅ができてから、人の流れができ、地域が栄えてきたとは思います。
そして現在、『月島もんじゃストリート』ができるまでに成長した月島エリア。約500mの通りに、大小50店舗以上ものもんじゃ焼き店が軒を連ねます。
休日ともなれば、通りはまるでお祭りのような賑わいぶり。『月島もんじゃストリート』を訪れる人のお目当ては、もちろんもんじゃ焼きです。
日本人はもちろん、海外からも東京の郷土料理であるもんじゃ焼きを求め、連日『月島もんじゃストリート』に観光客が訪れるようになりました。
もんじゃ焼きとお好み焼きの違い:食べるならどちらがおすすめ?
もんじゃ焼きとセットで語られることが多いのが、大阪の郷土料理であるお好み焼きです。

『浅草もんじゃ てっぱん大吉』のお好み焼き
もんじゃ焼きとお好み焼きのどちらも、水で溶いた小麦粉を生地としている点では同じ。
キャベツをベースに、さまざまな具材と組み合わせることでアレンジできる点も、もんじゃ焼きとお好み焼きに共通している魅力です。
しかし、もんじゃ焼きは水の分量が多いため生地はお好み焼きよりも、かなり緩くペースト状。一方のお好み焼きは、パンケーキのようにふんわりとした食べごたえのある食感です。

どちらがよりおいしいかは、決められるものではありませんが、「どちらを食べるべきか」を問われた時、利用シーンを1つの基準にしてみるのもいいでしょう。

お好み焼きは調理の仕上げにソースとマヨネーズをかけるので、しっかりとした味付けと食べごたえが魅力です。ソース系の濃い味がお好きな方や、もんじゃ焼きと一緒に味の変化を楽しみたいというお客様には、ご一緒におすすめすることもあります。
しっかりとお腹を満たしたい時、かつ複数人で利用する場合、食べごたえがありボリュームのあるお好み焼きはぴったり。
複数人で利用する場合、もんじゃ焼きもおすすめですが、『月島もんじゃ たまとや 月島本店』では、お好み焼きとの違いを次のようにあげます。

もんじゃ焼きは、焼き始めから、食べ終わるまで味の変化を楽しめる料理です。鉄板を囲んでお酒と一緒につまみながら楽しむのであれば、もんじゃ焼きがあっているのではないでしょうか。
もんじゃ焼きの具材:家で作る場合のヒント
もんじゃ焼きは、具材の掛け合わせによってさまざまな味わいが楽しむことができます。
使う具材に制限はなく、肉、魚介、はたまたカレーのルーを使ったり、多種多様です。
しかし、どんなもんじゃ焼きにも共通する基本の具材はあります。つまり、基本の具材を使えば、ほかは作る人の発想次第。
自由なアレンジが楽しめることこそ、もんじゃ焼きの一番の魅力といえます。
- 小麦粉と水:スープ状になるまで小麦粉を水で溶き、生地を作る。味付けはソースが一般的。ほかに醤油や塩ベースのタレもある。
- キャベツ:千切り、もしくは細かく刻んだものを使う。
- 揚げ玉:天かすとも呼ばれる。天ぷらの衣がたま状に揚がったもの。天ぷらを揚げる際にできる。
- 切りイカ:イカを干して作るスルメイカを、刻んだもの。
また、桜エビを基本の具材としてもんじゃ焼きに使う店舗もあります。
自宅で作る場合、切りイカや桜エビは、顆粒だしで代用することも可能。揚げ玉は風味がアップし、食感の違いも生まれますが、自宅で作るのなら入れなくても問題はありません。
もんじゃ焼きの焼き方
お好み焼きがすべての材料を混ぜ合わせてから鉄板の上で焼くというシンプルな作り方に対し、もんじゃ焼きはいくつかの手順を経て調理します。
どの店舗でも共通している調理手順は、下記の通り。
①油をひいた鉄板の上で、具材のみを炒める。この時、生地は丼の中に取っておく。

②炒めた具材をドーナツ型に形成する。

③ドーナツ型に形成した具材の空洞部分に生地を流し込む。

④ペースト状になるまで具材と生地を混ぜるようにして炒める。

店によって異なる焼き方のポイント
もんじゃ焼き店によって違いが出るのが、油をひいた鉄板の上で、具材のみを炒める手順。
『月島もんじゃ たまとや 月島本店』では、ヘラで細かく刻みながら具材を炒めます。


鉄板で具材のキャベツをよく刻み、甘みを出すことや、海鮮のうまみや出汁を引き出します。キャベツはよく刻むことで、もんじゃの生地と絡みやすくなりますし、じっくり熱することで余分な水分が抜け、よりうまみが凝縮されます。
一方の『好美家』は、時間をおかずにすぐに混ぜ合わせるスタイル。
キャベツの食感が程よく残り、シャキシャキとした歯ごたえがアクセントを加えます。


あらかじめ具材を細かく刻んであるので、すぐに生地と混ぜていただいて大丈夫です。すぐに食べてもいいですし、生地に焦げ目をつけてもいいですし、お好みの方法で食べてください。
月島の『月島もんじゃストリート』でおすすめのもんじゃ焼き店
50店舗以上ものもんじゃ焼き店が集まる、月島駅を最寄りとする『月島もんじゃストリート』は、もんじゃ焼きを食べるのにこれ以上ないほど最適な場所。
『好美家』と『月島もんじゃ たまとや 月島本店』もまた、『月島もんじゃストリート』に店舗を構えています。
定番のもんじゃ焼きを食べられる『好美家』

『好美家』の外観
1954年創業の『好美家』は、『月島もんじゃストリート』にあるもんじゃ焼き店の中でも、特に長い歴史を持ちます。
親子3代にわたって受け継ぐもんじゃ焼きは、昔ながらの定番の味。
ウスターソースで味を付けた生地と、豚肉、イカ、麺を具材に使う『特製もんじゃ』は、店の一番人気メニューです。

『好美家』の『特製もんじゃ』
また、ウスターソースではなく塩ベースのタレで生地に味を付けた『特製塩ダレもんじゃ』は、『好美家』ならではの1品。
こってりとした『特製もんじゃ』と比較的あっさりとした味わいの『特製塩ダレもんじゃ』で、食べ比べを楽しんでみてはいかがですか。
海鮮とオリジナリティを掛け合わせたもんじゃ焼きを提供する『月島もんじゃ たまとや 月島本店』
海鮮とオリジナリティを掛け合わせたもんじゃ焼きがそろう『月島もんじゃ たまとや 月島本店』。
2021年に『月島もんじゃストリート』にオープンした同店は、1871年創業の豊洲市場水産仲卸が母体に持つ強みをいかし、魚介にこだわったメニューがそろいます。

『月島もんじゃ たまとや 月島本店』の外観
特におすすめは、イカ墨と新鮮なイカゲソを惜しみなく使った『いか墨もんじゃ』。
新鮮だからこそのクリアな後味のイカ墨と、歯ごたえのよいイカゲソのコンビネーションが絶品です。

『月島もんじゃ たまとや 月島本店』の『いか墨もんじゃ』
魚介ベースの出汁が効いた生地としっかりと混ぜ合わせれば、ワインとも合う創作的なもんじゃ焼きが完成。
具材のイカやキャベツからもうまみが出て、満足度の高いひと口に、思わずうっとりとしてしまうこと間違いなしでしょう。
Umami bitesでは、『月島もんじゃストリート』にある他のおすすめもんじゃ焼き店も紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。