『東京らしさ』を考えた時、一体どんなエリアを思い浮かべますか。
世界的ブランドが軒を連ねるショッピングの街である銀座エリアに、流行の発信基地である渋谷エリアなど、それぞれ思い浮かべる東京のイメージは異なるはず。
しかし、グルメというテーマで東京を語るなら、新橋は外せません。

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スーツに身を包んだ会社員が、ネクタイを緩めて立ち寄る赤提灯は、今も健在。新橋には、東京のリアルな居酒屋文化が息づいています。
今回ご紹介するのは、そんな新橋で食べるべき料理と訪れるべき店の数々。どれも、リーズナブルに、そして確実に満足できるスポットばかりです。
新橋に根付く居酒屋文化 東京のディープな居酒屋の魅力
JR新橋駅の烏森口を出て左へ。信号を渡り、飲食店が連なる通りに足を踏み入れた瞬間、鼻をくすぐるのは、焼き鳥を仕上げる香ばしい煙です。
飲食店の規模はどこも小さく、カウンター席が数席に、隣同士の距離が近いテーブル席という気軽な雰囲気。
狭い空間ゆえに隣客との会話が生まれ、やがて店主も交えて談笑が広がることもあります。
肩肘張らず、しかし飲めば飲むほど心がほどけていく飲食店での時間こそが、新橋に根付く居酒屋文化の真骨頂です。

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予算は低め、満足度は高め 予算内で楽しむ新橋の楽しみ方
『安くておいしい』は、新橋では大前提。財布に優しいけれど、味に妥協はしない飲食店が、新橋にはひしめいています。
ここで紹介する5店舗は、いずれも個性的で、しかも1人あたり予算5000円以内で十分に楽しめる、コスパとクオリティのバランスが絶妙な店ばかりです。
立ちながら飲むスタイルで日本酒を堪能:立ち飲み庫裏
『立ち飲み庫裏』は、日本酒好きの隠れ家。1人でも気軽に立ち寄れる、カジュアルな立ち飲みスタイルの飲食店です。

『立ち飲み庫裏』の外観
店がそろえる日本酒は希少な銘酒ばかりながら、1杯(40ml)150円前後という安さ。日本酒の種類によっては、1杯(80ml)500円(税込み)のものもありますが、それでもリーズナブルなことに変わりありません。
日本酒とともに味わう料理は、『マカロニポテトサラダ』『酢の物』『新じゃがいもフライ』など、丁寧に仕込まれた逸品がそろいます。
嬉しいのは、ポーションが小さめで、1皿100~300円(税込み)という破格の値段。郷土料理や発酵食品などもあり、日本ならではの料理を味わえます。

『立ち飲み庫裏』でしか味わえない日本酒
日本酒の品ぞろえもさることながら、『立ち飲み庫裏』の一番の魅力は、女将と若女将の人柄。
常連客も、初見の客も分け隔てなく接するあたたかな接客に、ついつい時間が経つのも忘れて長居してしまいます。

『立ち飲み庫裏』の(左)女将・栗原伊津子氏と(右)若女将・栗原貴子氏
北海道直送のカニをリーズナブルに味わえる:かに地獄
店名のインパクトとは裏腹に、北海道直送の上質なカニを使った料理をリーズナブルに味わえるのが『かに地獄』。
名物の『蟹漁師鍋』は、鮮やかな紅ズワイガニと上品な甘みが特徴の本ズワイガニをメインに、あふれんばかりの具材を盛り込んだ、ボリューム満点の鍋料理です。

『かに地獄』の『蟹漁師鍋』
2~3人前ほどあるため、友人同士や家族でシェアして食べるのがおすすめ。
カニの身から染み出たエキスと出汁、具材の野菜のうまみが融合した濃厚な味わいが絶品です。

『かに地獄』の『カニ味噌甲羅焼き』
『蟹漁師鍋』と合わせて味わいたいのが『カニ味噌甲羅焼き』。
香ばしく濃厚なカニ味噌を、『蟹漁師鍋』のカニの身につけて食べれば、リッチな味が堪能できます。
日本酒とともに『カニ味噌甲羅焼き』をつまむのも、粋な楽しみ方です。
高級食材であるカニを気軽に楽しめるコスパのよさは、もしかしたら新橋随一といえるかもしれません!
昼と夜で趣が変わる店:豚屋 鳥山
昼夜で表情を変える店があります。新橋の『豚屋 鳥山』は、まさにその理想形です。

『豚屋 鳥山』の『豚定食(TOKYO X)』
昼の主役は、東京生まれのブランド豚『TOKYO X』を極厚にカットして焼き上げた『豚定食』。
300gもあるボリューム感だけでも衝撃的ですが、驚くのはその食感です。
表面は香ばしくカリッと焼き上げられ、中はジューシーでやわらかく、ひと口で豚の概念を変えてくれます。

『豚屋 鳥山』の『豚定食(TOKYO X)』
『豚屋 鳥山』では、15時になると、『せんべろセット』というユニークなメニューが登場。
1,100円の1セットを注文すると、酒や一品料理と交換できるコインが3枚と、お通しが1品提供されます。
一品料理は、コイン1枚で交換できる『ムール貝の唐揚げ』に、コイン2枚で交換の『えびフリット』や『とろとろ鶏レバー』など多彩。
食事の満足感、酒場としての気軽な空気感がちょうどよく同居する場所が、新橋の『豚屋鳥山』なのです。

『豚屋 鳥山』の夜の提供メニュー一例
東京では珍しい鳥取と岡山の郷土料理店:ビストロカフェ ももてなし家
日本の知られざる逸品に出会いたいあなたにおすすめしたいのが『ビストロカフェ ももてなし家』。
鳥取と岡山の郷土料理、そして地酒をそろえる『ビストロカフェ ももてなし家』で注文したいのが、『日本酒飲み比べセット』と『鳥取&岡山 名店・特産10点盛』の2つです。

『ビストロカフェ ももてなし家』で楽しめる日本酒
『日本酒飲み比べセット』は、鳥取と岡山、各県ごとに3種類の日本酒を店側がチョイスしたセット。
鳥取は米のうまみとキレのよさがあり、一方の岡山はまろやかな口当たりで、フルーティーな味わいと、どちらも異なる魅力にあふれています。
合わせるのは、両県の地元で親しまれている一品料理を5種類ずつ盛り付けた『鳥取&岡山 名店・特産10点盛』。

『ビストロカフェ ももてなし家』の『鳥取&岡山 名店・特産10点盛』
魚のすり身をレモンで味付けした『チータラ』、トビウオのちくわに豆腐のちくわと、珍しい一品料理がもりだくさん。
東京にいながら、地方を旅している気分に浸れる、知る人ぞ知る名所です。
激辛好き必見の名古屋の味を東京で:郭 政良 味仙
激辛ファンを魅了するのが、『郭 政良 味仙』の『台湾ラーメン』です。
ニンニクと唐辛子、そして粗挽きの肉みそが絡み合い、あふれんばかりの辛さとうまみが真っ赤なスープに溶け込んでいます。

『郭 政良 味仙』の『台湾ラーメン』
パンチのある味わいは、箸が止まらぬおいしさ。食べ進めるごとに汗がひたいににじみ出します。
刺激的な辛さは舌がしびれるほどですが、それこそが『台湾ラーメン』の魅力。
食べ終わりは気分も爽快、一度食べたらトリコになる中毒性が、『郭 政良 味仙』の『台湾ラーメン』にはあります。

『郭 政良 味仙』の『台湾ラーメン』
新橋の夜は、どこか懐かしく、そして刺激的。華やかさはないけれど、東京という街の素顔が感じられます。
ディープな居酒屋体験とは、ただ酔うことではありません。味と人と空気にじんわりと浸ること。夜の新橋は、そんな体験をゆるやかに差し出してくれます。
あなたなら、新橋のどの店を訪れますか。
※メニューの内容や料金、店舗情報などは2025年7月時点のものです。