和菓子は日本の伝統的な菓子で、2000年以上の歴史を持つ日本独特の文化です。
四季の移ろいを表現し、お茶との相性を考えて作られた美しい見た目と上品な甘さが特徴で、海外からの観光客にも人気が高まっています。現在では餅物、蒸し物、焼き物、流し物など多様な種類があり、季節ごとに異なる味わいを楽しむことができます。この記事では、和菓子の基本的な知識から種類、選び方まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
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和菓子の歴史と文化的背景
和菓子の起源は古く、その発祥は2000年以上前まで遡ります。最初は木の実を粉にして丸めたものや餅が、現在の和菓子の始まりとされています。その後、時代の流れと共に、中国文化や茶道、西洋菓子などの影響を受けて進化してきたといわれています。
江戸時代になると材料や技術が大きく発展し、現代の和菓子の原型が完成しました。この時期には砂糖が普及したことにより、現在私たちが知る甘い和菓子が誕生し、庶民の間でも親しまれるようになったようです。
現代では伝統的な製法を守りながらも、新しい素材や技術を取り入れ、時代に合わせた和菓子が作られ続けています。観光客にも親しみやすい形で提供されており、日本文化を体験する重要な要素となっています。

『まほろ堂 蒼月』
和菓子の基本材料
和菓子の材料は基本的に植物性が中心で、卵以外の動物性素材はほとんど使用されません。主要な材料には、小豆や白小豆などの豆類、もち米やうるち米などの米類、小麦粉、各種砂糖などがあります。
中でも砂糖の種類は和菓子の味わいに大きな影響を与えます。上白糖、グラニュー糖、和三盆など、それぞれ異なる甘さと風味があるため、和菓子店では商品によって使い分けることもあります。和三盆は特に高級な砂糖として知られ、上品な甘さが特徴です。
和菓子の種類と分類
和菓子は製法や形状によっていくつかの種類に分類できます。
それぞれに特徴があり、季節や用途に応じて選ばれています。
餅物の特徴
餅物は餅を主原料とした和菓子で、柏餅、大福、おはぎなどが代表的です。もちもちとした弾力のある食感の生地の中にあんが入っているものが多く、手軽に食べられる和菓子として親しまれています。
特に大福は観光客にも人気が高く、いちご大福や抹茶大福など、現代的なアレンジも楽しめます。季節によって桜餅(関西風桜餅、道明寺)や柏餅など、特定の行事に合わせた餅物も販売されています。

『まほろ堂 蒼月』で提供される『青豆大福』
蒸し物(むしもの)と焼き物(やきもの)
蒸し物は蒸して作る和菓子で、蒸し饅頭や栗蒸し羊羹などがあります。ふっくらとした仕上がりが特徴で、温かいうちに食べるとよりおいしく味わえます。
焼き物は銅板やオーブンで焼く和菓子で、どら焼き、桜餅(関東風桜餅、長命寺)、カステラなどが含まれます。香ばしい風味と程よい甘さが楽しめ、お土産としても人気の高い種類です。

『鎌倉甘味処くるみ』で提供される『くるみ饅頭』
流し物と練り物
流し物は型に流して固める和菓子で、羊羹が代表的な例です。滑らかな食感と上品な甘さが特徴で、お茶との相性が抜群です。水羊羹は夏の定番として親しまれています。
練り物はあんを練って形作る和菓子で、『練り切り』や『こなし』などの種類があります。職人の技術により美しい形に仕上げられ、見た目の美しさも楽しめる芸術的な和菓子です。

※写真は『羊羹』のイメージ
季節に応じた和菓子の楽しみ方
和菓子の大きな特徴の1つは、四季の移ろいを表現することです。季節ごとに異なる和菓子が作られ、その時期限定で販売されるものも多くあります。
春の和菓子
春には『桜餅』『草餅』『花見団子』など桜の季節を彩る美しい和菓子が登場します。特に桜餅は関東風(長命寺)と関西風(道明寺)の2種類があり、それぞれ異なる味わいが楽しめます。
3月のひな祭りには『菱餅』や『ひなあられ』が販売され、日本の伝統行事と密接に関わっています。練り切りでは梅の花や桜の花をモチーフにした美しい作品も作られます。

※写真は『花見団子』のイメージ
夏の和菓子
夏には『水羊羹』『葛桜』『くず餅』などの涼しげな和菓子が人気です。透明感のある見た目とさわやかな味わいで、暑い季節に涼を提供してくれます。
7月の七夕には星をモチーフにした練り切りが作られ、見た目にも涼しい青や白を基調とした色合いの和菓子が多く登場します。かき氷風の和菓子や冷たいぜんざいなども夏の定番です。

※写真は『水羊羹』のイメージ
秋冬の和菓子
秋には栗を使った和菓子や紅葉をモチーフにした練り切りが楽しめます。『栗きんとん』や『栗羊羹』などは秋の味覚を代表する和菓子として人気があります。
冬には1月の『花びら餅』や温かい『お汁粉』などが登場します。正月には松竹梅や鶴亀をモチーフにした縁起のいい和菓子も作られ、新年を祝う気持ちを表現しています。

※写真は『お汁粉』のイメージ
和菓子の選び方とポイント
初心者が和菓子を選ぶ際には、いくつかのポイントを押さえておくと失敗が少なくなります。用途や好み、保存方法なども考慮して選ぶことが大切です。
用途に応じた選び方
手土産として選ぶ場合は、日持ちする羊羹や最中、どら焼きなどがおすすめです。これらは常温で数日間保存が可能で、相手に急いで食べるような負担をかけずに楽しんでもらえます。
その場で食べる場合は、生菓子の練り切りや大福などの新鮮な和菓子を選ぶとよいでしょう。季節限定の和菓子も旅行の思い出として特別な体験になります。

『まほろ堂 蒼月』で提供される『まねき猫どら』(どら焼き)
甘さの好みに合わせた選び方
甘さが苦手な人には、塩味のきいた桜餅や、あっさりとした水羊羹がおすすめです。また、抹茶を使った和菓子は程よい苦味があり、甘すぎず上品な味わいが楽しめます。
甘いものが好きな人には、あんこがたっぷり入った大福や、濃厚な味わいの栗羊羹などが適しています。初めて和菓子を食べる人は、どら焼きなど親しみやすい味から始めるのもいいでしょう。

※写真は『いちご大福』のイメージ
保存方法と購入時の注意点
和菓子は種類によって保存方法が異なるため、購入時に店員に確認することが重要です。生菓子は当日中に食べる必要がありますが、羊羹や最中は常温で数日間保存できます。
観光で購入する場合は、帰国までの日数を考慮して選ぶことも大切です。冷蔵が必要な和菓子は持ち帰りが難しいため、常温保存可能なものを選ぶと安心です。
定番の和菓子と初心者におすすめの種類
和菓子には多くの種類がありますが、初心者には親しみやすい定番の和菓子から始めることをおすすめします。それぞれの特徴を理解して、お気に入りを見つけてください。
観光客におすすめの定番和菓子
どら焼きは焼き菓子の代表格で、カステラ風の生地にあんを挟んだ親しみやすい和菓子です。常温保存が可能で、お土産としても人気があります。はちみつやバターを使った現代風のアレンジも楽しめます。
大福は餅物の代表で、柔らかいお餅の中にあんが入っています。いちご大福や抹茶大福など、季節や店舗によってさまざまな種類があり、日本らしい食感を楽しめます。

『まほろ堂 蒼月』で提供される『まねき猫どら』(どら焼き)
季節限定の特別な和菓子
桜餅は春の代表的な和菓子で、桜の葉の塩味とあんの甘さの絶妙なバランスを楽しめます。関東風と関西風で異なる食感があり、両方を試すのも面白い体験です。
柏餅は5月のこどもの日に食べられる和菓子で、柏の葉で包まれています。葉は食べずに香りを楽しむもので、日本の文化を感じられる一品です。
和菓子を楽しむための基本マナー
和菓子を本格的に楽しむためには、基本的なマナーを知っておくといいでしょう。茶道の影響を受けた和菓子には、美しい食べ方があります。
『茶道』について、より詳しく知りたいという人は、こちらの記事もご覧ください。
お茶との組み合わせ
和菓子は基本的に日本茶と一緒に楽しむものとして作られています。抹茶や煎茶、ほうじ茶など、和菓子の種類に応じて適切なお茶を選ぶと、よりおいしく味わえます。
甘い和菓子には苦味のある抹茶がよく合い、あっさりとした和菓子には煎茶やほうじ茶が適しています。お茶の温度も重要で、熱すぎず適温で楽しむことが大切です。

『雷一茶』で提供される『雷一茶流 お抹茶 上生菓子付き』
食べ方の基本
和菓子はひと口サイズに切って食べるのが基本です。皿に盛られて提供された場合は一緒に付いてくる楊枝や菓子切り(黒文字)を使って丁寧に食べます。急いで食べるのではなく、見た目の美しさも楽しみながらゆっくりと味わいましょう。
練り切りなどの繊細な和菓子は、手で直接触れずに道具を使って食べてください。季節感や職人の技術を感じながら、五感すべてで楽しむことが和菓子の醍醐味です。
まとめ
和菓子は2000年以上の歴史を持つ日本の伝統的な菓子で、四季の移ろいを表現する美しい文化です。餅物、蒸し物、焼き物、流し物など多様な種類があり、それぞれに特徴と魅力があります。
初めて和菓子を食べる際は、どら焼きや大福などの定番の和菓子から味わってみると理解しやすいかもしれません。季節限定の和菓子も旅行の特別な思い出となるでしょう。日本茶と一緒に楽しむことで、和菓子だけで食べるのとは一味違う味覚を体験できるはずです。
和菓子は単なる甘味ではなく、日本の美意識や季節感を表現した芸術品のようなものでもあります。観光で日本を訪れる際は、ぜひさまざまな和菓子を試して、日本の豊かな食文化を味わってみてください。