日本動物園水族館協会に加盟する、日本国内の動物園の数は約90施設。
数ある動物園の中で、最も長い歴史を誇るのが、東京都台東区の上野にある上野動物園です。

上野動物園の正門
都市部にありながら、自然を身近に感じられる園内で暮らす動物たちは、約300種3,000点。
上野のシンボル的存在であるパンダや、動物園の人気者であるゴリラやトラ、さらには絶滅危惧種までさまざまな動物たちと出会えます。

上野動物園で飼育展示されているパンダのレイレイ
また、上野動物園は『アニマルウェルフェア』、つまり動物たちの生活の質を向上させる取り組みに基づいた飼育を行っているからこそ生まれる、魅力や発見の宝庫。
上野動物園を楽しみつくすポイントを、同園の副園長を務める冨田恭正さんの解説とともに紹介していきます。

上野動物園の副園長を務める冨田恭正さん
上野動物園で暮らす多種多様な動物たち
都心部に位置する上野動物園は、他の動物園に比べて敷地面積が決して広いとはいえません。
だからこそ、展示施設を組み合わせたり、複数の動物種を同一施設で飼育展示したり、敷地を有効活用する工夫が目白押し!
もちろん、そこには『アニマルウェルフェア』への取り組みも関係しています。
ゴリラ:群れで暮らす自然な姿をチェック!

『アニマルウェルフェア』が顕著に表れている展示エリアとしては、ゾウやゴリラがあります。例えば、ゴリラは2012年1月から昼夜を問わず24時間、群れで飼育するようにしました。

上野動物園ではゴリラを24時間、群れで飼育展示をしている
もともと上野動物園のゴリラは、1頭ずつ単独で飼育・展示がされていました。
しかし、ゴリラは本来群れで暮らす動物。そこで、父親、母親とその子供たち、加えて叔母と、全7頭で群れを形成し、家族で過ごせる飼育環境に変更されました。
展示エリアでは、子供のゴリラが、大人のゴリラに甘える様子を見せることもあり、穏やかな雰囲気。
家族で暮らしているからこその自然なゴリラたちの姿に、来園者たちの目も釘付けです。

ほかにも、ゾウなら砂山で遊んだり昼寝をしたり、ありのままで主体性を高めた飼育をしています。しかし、『アニマルウェルフェア』に終わりはなく、現在の飼育展示方法が完成というわけではありません。これからも動物たちにとってよりよい形に近付ける工夫をしていきます。
ニホンカモシカとエゾシカ:上野動物園のフォトスポットとしても人気
上野動物園には魅力的な動物がたくさんいるにも関わらず、なぜニホンカモシカとエゾシカの展示エリアが「人気フォトスポット」といわれるのか、不思議に思う人もいるでしょう。
パンダやゴリラ、ゾウにキリン、動物園のおなじみの動物たちが、上野動物園には多く暮らしています。
しかし、実際に来園した多くの人がこのエリアで足をとめ、記念撮影をしているのだそう。その理由は、動物たちの展示エリアの間近に建つ旧寛永寺五重塔。
国の重要文化財にも指定されている史跡と動物が一度に見られる珍しいエリアなのです。

上野動物園内に建つ、旧寛永寺五重塔
さらに、異なる種類の動物を同じエリアで展示する、混合展示を取り入れているのも特徴。
冨田さんによると、上野動物園で暮らす哺乳類の中で、混合展示を行っているのは、ニホンカモシカとエゾシカだけだといいます。
では、動物たちにとっての混合展示のメリットは何か、理由を冨田さんは次のように説明します。

混合展示のメリットは、動物たちに適度な刺激を与えられることです。
同じエリアで異なる動物たちが共存しているのが、自然界のあるべき姿。展示環境を野生に近付けることで、動物たちの自然な行動がみられるようになります。
お互いの存在を認識しあうことで生まれる刺激は、動物たちの飼育環境を考えるうえでも、大切な展示方法なのです。

取材時には、エゾシカのみが展示されていた
アイアイ:絶滅が危惧されている貴重な種
マダガスカル共和国を生息地とするアイアイは、絶滅が危惧される動物です。
日本国内でアイアイを飼育している動物園は、2025年3月時点では上野動物園のみ。アイアイの繁殖を目指して、取り組みを行っています。

上野動物園で飼育展示されているアイアイ

アイアイに限らず、種を守っていくことが動物園の使命です。そのため、他の動物園とも協力しています。アイアイの場合、国際的なネットワークのもとで種の存続を行っています。
来園者にとって、動物園は珍しい動物と出会える貴重な場。また、愛らしい動物たちの姿に、癒しをもらうことができます。
一方で、動物たちは私たち人間の存在により、生活の場が奪われているという側面も。
動物園は、動物たちを飼育展示するだけではなく、次世代に貴重な種を受け継いでいくための役割も持ち合わせています。
動物たちが、上野動物園に来園した経緯を知ることで、また違う気付きが得られるはずです。
ホッキョクグマ:元気に遊びまわる上野動物園の人気者
ホッキョクグマもまた、絶滅が危惧されている動物です。

絶滅危惧種に指定されているホッキョクグマ
日本国内では、2025年2月時点で動物園と水族館あわせて18施設で飼育されており、頭数は約30頭。
上野動物園では、2頭のホッキョクグマを飼育しており、繁殖の試みが行われています。

上野動物園のホッキョクグマ
北極圏の氷壁と氷原をイメージした展示エリアは、屋外だけでなく屋内からも、ホッキョクグマを見られる造り。
とりわけユニークなのは、屋内に用意されているプールを囲むようにして作られた、観覧用の通路です。
『水と氷の回廊』と呼ばれるこの通路では、ガラス越しにホッキョクグマを間近で観察することができます。
プールの中を泳ぐホッキョクグマは迫力満点!時間帯を問わず、人が集まる人気エリアです。
パンダ:上野のアイドル的存在は行列必須

上野動物園のパンダを観覧するには列に並ぶ必要がある
上野動物園のアイドル的存在、パンダの観覧は忘れてはいけません!
土日、祝日ともなればパンダの観覧のために長い行列ができ、待ち時間は1時間以上。平日でも待ち時間は、30分をみておくといいでしょう。
過去に行っていた整理券の配布は廃止されており、観覧列への整列は15時30分まで受け付けています。
なお、公開時間は10~16時ですが、日中のパンダは昼寝と活動を頻繁に繰り返すため、タイミング次第では見られないことも。
だからこそ、元気いっぱいに展示エリアを動き回るパンダに会えた時の喜びは、ひとしおです。
ひと目見れば、あなたもきっとパンダの魅力のトリコになってしまうはず!

上野動物園で飼育展示されているパンダ
上野動物園で食べたい!おすすめフードメニュー
1日楽しめる上野動物園は、フードメニューも充実。上野動物園ならではのメニューもあり、来園時には食べ歩きも楽しめます!

上野動物園で食べられるフードメニュー
まず紹介するのは、刻んだタケノコを肉餡に練り込んだ『パンダまん』。園内の『カフェカメレオン』でのみ販売しています。
パンダのデザインは、食べるのがもったいなく感じられるほどのかわいさ。
生地はふわふわ、肉餡はジューシーで、歯ごたえを感じるタケノコの食感がアクセントになっています。

『パンダまん』 500円(税込み)
ひと口サイズが嬉しい『体験!パンダだんご』は、コンセプトがユニーク。
上野動物園で暮らすパンダが実際に食べている団子を、再現したものです。
ほのかに甘く弾力感のある団子は、小腹が空いたときにぴったり!
こちらはファストフード店の『バードソング』と『カフェカメレオン』で食べられます。

『体験!パンダだんご』 300円(税込み)
しっかり食べたい時は、『竹皮パンダ弁当』をチョイス。
上野動物園オリジナルのメニューで、本物の笹の葉で包まれています。
『バードソング』と『カフェカメレオン』で販売している『竹皮パンダ弁当』は、おこわと黒豆で、パンダの絵柄を描いており写真映えすること間違いなし!

『竹皮パンダ弁当』 750円(税込み)
ほかにも、大豆ミートを使用したハンバーガーや、ヴィーガン対応のカレーもあり、食の多様性にも対応している上野動物園。世界中から来園者が訪れる動物園ならではです!

動物たちが活動的な朝から入園し、昼食をとってから、午後にパンダを見るというルートで1日中楽しめます。
上野動物園でゲットしたいお土産
上野動物園を訪れたなら、お土産もぜひ購入したいところ!
自分用にはもちろん、友達や家族に配りたくなるお土産など幅広くそろっています。

『子供パンダ』 ※時期によって販売していあい場合あり
上野動物園の人気者、パンダのぬいぐるみは定番のお土産。ミニサイズなので、部屋のインテリアとして飾っておくのもおすすめです。

『大人用ソックス パンダ』 ※時期によって販売していあい場合あり
かわいらしいデザインの靴下は、大人用サイズで販売中。
落ち着いた色合いで、どんなコーディネートにも馴染みます。
上野動物園の開園時間と3つの入場門
上野動物園は、園内に正門、弁天門、池之端門の3つの入り口があります。
開園時間は朝9時30分ですが、東京メトロ線の根津駅が最寄りの池之端門のみ、入り口が開くのは朝10時。
開園と同時に入園する場合は、正門、弁天門を利用しましょう。

上野動物園の弁天門。パンダの観覧エリアに最も近い入場門
なお、JR線の上野駅の公園口から歩いて5分程度の場所にある正門は、多くの来園者が集まるため、休日は混雑します。
一方の弁天門は、正門と比べると比較的空いているため、時間をかけずに入園したい場合におすすめです。
上野動物園のチケット情報:チケットの金額と購入方法
入園料は、一般600円、65歳以上は300円、中学生200円。65歳以上と中学生は、年齢を確認できる証明書の提示が必要です。
チケットは、入場門の券売機で購入でき、多言語に対応しています。

券売機は、日本語・英語・中国語・韓国語・スペイン語に対応
事前にオンラインチケットの手配も可能
チケットは、来園当日にそれぞれの入場門で購入できるほか、オンラインで事前に手配することもできます。
開園時間と同時に入園したい場合や、混雑する休日は、オンラインチケットがおすすめ。
入場門のスタッフへオンラインチケットのQRコードを提示する形で、入園できます。

オンラインチケット購入後は、スタッフに見せるだけ
上野動物園のインバウンド対応
日本全国にある動物園の中で、トップクラスの来園者数を誇る上野動物園。
日本人はもちろん、海外から訪れた人でも安心して利用できるよう、言語面のサポートが充実しています。
例えば、パンフレットは日本語のほかに、英語、中国語、韓国語を用意。園内の看板の表記も、多言語で記載されています。

園内マップは入場門で無料でもらえる
インフォメーションセンターで導入している通訳サービスは、英語、中国語、韓国語に加え、ロシア語とタイ語にも対応。
こちらは、リアルタイムでオペレーターにつながり、映像を介して通訳をしてくれるというサービスです。

多言語の通訳サービスも上野動物園では導入している
一方で、最大のインバウンド向けサポートは、日本の文化に通じる『おもてなし』の心なのかもしれません。

ご来園された外国人のお客様が快適に楽しんでいただけるようなおもてなしをしていることが最大の誘致です。
上野動物園の施設情報
施設名 | 上野動物園 うえのどうぶつえん Ueno Zoological Gardens |
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住所 | 東京都台東区上野公園9-83
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アクセス |
上野駅(UEN)公園口から【正門】まで徒歩5分
京成上野駅正面口から【弁天門】まで徒歩4分
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電話番号 | 03-3828-5171 |
開園時間 | 9:30~17:00 ※入園券の発売は16時まで |
休園日 | 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日が休園日)、年末年始(12月29日~1月1日) |
観覧料 | 一般/600円 65歳以上/300円 中学生/200円 12歳未満/無料 |