広く収集された日本・東洋の古美術を、美しい建物とともに鑑賞【大倉集古館】

港区虎ノ門に佇む『大倉集古館』は、現存する日本最古の私立美術館です。

明治から大正時代にかけて活躍した実業家の大倉喜八郎氏が生涯をかけて蒐集した日本や東洋各地の古美術品、そしてその息子でありホテルオークラの創業者、喜七郎氏が集めた日本の近代絵画を中心に、約2,500点の美術品を収蔵しています。

2019年にリニューアルされた建物も見逃せません。今回は『大倉集古館』の魅力をじっくり見ていきます。

六本木にある大倉集古館の写真

『大倉集古館』の外観

『オークラ東京』に隣接する美術館

日本を代表するラグジュアリーホテルの1つ、『オークラ東京』。その隣接地に位置するのが『大倉集古館』です。

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金剛力士像

館内に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは入口の左右にそびえる金剛力士像。

この寄木造りの金剛力士像は、鎌倉から室町時代の作と伝わり、力強い手足の表現が圧倒的な迫力です。

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入口左側には『登録有形文化財』の銘も掲げられており、歴史の重みを感じさせます。

1917年の創設当初の建物や多くの陳列品は、1923年の関東大震災で失われましたが、その後、東京帝国大学教授であり『築地本願寺』の設計でも知られる伊東忠太氏が新たに設計を手掛け、1928年に再開館しました。

東洋美術の権威であった伊東忠太氏の手により、館内のいたるところにアジアの美術を感じさせる文様やモチーフが散りばめられています。

『大倉集古館』は美術品鑑賞だけでなく、建築美も存分に楽しめる空間なのです。

大倉集古館は常設展はなく、企画展や特別展のみ開催していますが、今回紹介した仏像やレリーフはどの展覧会でも見ることができます。

2025年9月現在は展示替えのため休館中ですが、2025年11月22日から2026年1月18日までは、企画展『人々を援(たす)け寄り添う神や仏-道釈人物画の世界』が開催予定です。

ただし、入口の金剛力士像など、常に鑑賞できる作品もいくつかあります。

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中国から取り寄せた仏像

例えば、1928年の再開館時に中国から取り寄せた仏像は、当時世界最古の仏像と考えられていました。

この仏像は、中国の少数民族が一族の繁栄を願って制作したものといわれています。

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中国から取り寄せた仏像の背面

ぜひ背面もご覧ください。兵士や侍女のレリーフや関係者の名前が刻まれているのが確認できます。

館内の装飾を隅々まで堪能する

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展示室は1階と2階に分かれています。階段を上がるときは、手すりに鎮座する丸みを帯びた愛らしい獅子にぜひ注目してみてください。

この獅子は来館者の心を和ませる役割を果たしています。

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2階の展示室の室内

2階の展示室に足を踏み入れると、1階とは異なる装飾が目に入ります。天井や柱に施された繊細なレリーフが特に印象的です。

天井には龍のレリーフが堂々と飾られています。

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さらに、軒を支える柱の上部に位置する斗栱(ときょう)には、『吻(ふん)』と呼ばれる水を司る幻獣が鎮座。

この『吻』は建物の屋根にも存在するため、外観からも探してみてください。

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『吻』が鎮座する斗栱

関東大震災で前の建物を失った経験から、伊東忠太氏が館内に施した装飾の多くには『魔除け』や『災難除け』の祈りが込められているのが特徴です。

2階には中国風の美しい装飾と共に、開放感あふれるテラスがあります。

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2階のテラス

テラスに置かれた椅子は、伊東忠太氏の設計によるもので、修復を重ねつつ開館当初から大切に使われているものです。

ぜひ椅子に腰掛け、100年近くの歴史を感じてみてください。

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伊東忠太氏が設計した椅子

天井の照明も開館当初のまま。

格天井や中国風の窓枠など、細部まで美しいテラスの魅力を堪能できます。

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屋外に置かれた彫刻にも注目

『大倉集古館』は建物の外にも見どころが満載。

創設者である大倉喜八郎氏のブロンズ像は、訪れる人々に人気のフォトスポットです。

また、武石弘三郎氏が1913年に制作した彫刻『双亀』も建物の裏手に設置されています。

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大倉喜八郎氏のブロンズ像

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『双亀』

周囲には朝鮮や中国の古い石像や空想上の生き物の彫刻が多く、閉館中でも鑑賞が可能です。

建物正面に立つ一対の高燈籠は、徳川将軍家の菩提寺として知られる上野の『寛永寺』に由来するもの。

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高燈籠

特に右側の高燈籠には注目。奉納者の銘が刻まれており、『参議従三位兼行右近衛権中将光國前』とあります。

この『光國』とは、徳川家康の孫であり水戸藩主であった徳川光圀のこと。日本ではドラマ『水戸黄門』のモデルとしても広く知られています。

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ミュージアムショップで見つける日本土産

企画展にちなんだグッズや書籍、収蔵品のポストカードやクリアファイル、一筆箋、オリジナルのお香など、多彩な商品が揃っています。

日本美術ファンにぴったりのお土産探しにぜひ立ち寄りたいスポットです。

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『大倉集古館』の各種グッズ

地下1階には、大倉喜七郎が愛好した尺八の音色で西洋音楽を演奏するため、1935年に考案・制作した金属製多孔尺八『オークラウロ』の展示も。

『幻の楽器』と称される『オークラウロ』を通じて、ホテルオークラ創始者である喜七郎氏の人柄に触れられます。

『オークラウロ』

2025年9月現在は展示替えのため休館中ですが、2025年11月22日から2026年1月18日までは、企画展『人々を援(たす)け寄り添う神や仏-道釈人物画の世界』が開催されます。

江戸時代を中心に制作された神仏の姿を絵画で紹介する内容です。

ここでしか味わえない歴史と美の調べが、訪れる人の心に深く響くことでしょう。

施設情報

施設名 大倉集古館
おおくらしゅうこかん
Okura Museum Of Art
住所 東京都港区虎ノ門2-10-3
アクセス 神谷町駅4b出口から徒歩7分
  • 東京メトロ日比谷線(H05)
虎ノ門ヒルズ駅A2a出口から徒歩7分
  • 東京メトロ日比谷線(H05)

六本木一丁目駅3番出口から徒歩8分
  • 東京メトロ南北線(N05)
電話番号 03-5575-5711
開館時間 10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで) ※特別展・企画展は別途
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は火曜日が休館日)、年末年始
入館料 一般/1000円(特別展は1,500円)
大学生・高校生/800円(特別展は1,000円)
中学生以下無料(付添者の同伴が必要) /無料 ※展覧会によって入館料が異なる場合あり
ウェブサイト https://www.shukokan.org/
パンフレット 日本語・英語に対応
音声ガイド なし

※施設情報は2025年9月時点のものです。