たばこ風俗が描かれた浮世絵のコレクション 押上のたばこと塩の博物館で江戸の風俗に寄り添う 

東京都墨田区にある『たばこと塩の博物館』は、その名の通り、たばこと塩の歴史や文化を学べる、ユニークな博物館。

それだけではなく、浮世絵のコレクションも見どころの1つです。江戸時代の浮世絵からは、当時の風俗や人々の暮らしを垣間見ることができます。

たばこ文化を伝える浮世絵のコレクション

『たばこと塩の博物館』の外観

『たばこと塩の博物館』の外観

かつて日本では、たばこと塩は国による専売品でした。

専売事業のうち、たばこの専売開始70周年を記念して、1978年に設立されたのが、『たばこと塩の博物館』です。

2015年に渋谷から現在の押上に移転した『たばこと塩の博物館』では、主にたばこをテーマに収集された約2,000点の絵画資料が所蔵されており、その中には多数の浮世絵が含まれます。

『浮世』とは、当時の流行や風俗、娯楽などを表す言葉で、浮世絵はそうした庶民文化を映し出す木版画として、江戸時代に大きく発展しました。

当時の人々の暮らしや街の風景、人気役者や美人画など、さまざまなモチーフが生き生きと描かれています。

『たばこと塩の博物館』で収集されている浮世絵作品は、特定の絵師や時代に偏らず、幅広い作品がそろっているのも特徴。江戸時代の浮世絵の多様性を感じられる、見ごたえのあるコレクションです。

音声と紙によるガイドあり

音声ガイドは5か国語に対応

展示をじっくり楽しむためのサポートも充実しています。

受付では、音声ガイドと紙のパンフレットを用意しており、音声ガイドは日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語に対応。

また、紙のパンフレットも日本語のほか、英語、中国語、韓国語、スペイン語でも展開されています。

博物館の浮世絵は庶民文化を紐解くカギ

たばこが描かれた浮世絵から江戸の暮らしや文化を見ることができる

たばこが描かれた浮世絵から江戸の暮らしや文化を見ることができる

16世紀後半に日本に伝来したとされるたばこは、江戸時代以降の人々にとって身近な存在でした。

現代では休憩といえばお茶の時間を連想しますが、江戸時代の庶民は、ひと息つくことを「たばこにしよう」といったそうです。

当時の風俗や暮らしを描いた浮世絵には、喫煙の様子や道具、たばこを嗜む人物がよく登場しています。

『たばこと塩の博物館』ではこうした絵画資料をもとに、たばこがどのように人々の生活に根付いていたかを伝えます。

浮世絵の収集は単なる美術品としてではなく、文化資料としての側面もあり、当時の世相や価値観を紐解く手段にもなっているのです。

豊富なコレクションをさまざまな切り口で楽しめる

たばこと塩の博物館の浮世絵

定期的にテーマが変わりさまざまなコレクションが見られる

『たばこと塩の博物館』では、テーマごとに内容が変わる特別展と、たばこと塩の歴史と文化を紹介する常設展の2つが楽しめます。

常設展の中でも注目したいのが、浮世絵を集めた展示スペース。ここではたばこに関連する作品だけでなく、時代背景や暮らしぶりなど、さまざまな視点から選ばれた浮世絵が紹介されています。

2025年7月の取材時には、夏休みに合わせて子供でも楽しめるような『動物』をテーマにした展示が行われていました。

歌川国芳『御奥の弾初』<

歌川国芳『御奥の弾初』

その中からまずご紹介するのは、歌川国芳の『御奥の弾初』です。

上流階級の屋敷で、琴の演奏を楽しむ女性たちを描いています。

女性たちの真ん中に、鎮座するのは襟飾りをつけた狆(犬)。当時の狆は、ペットとして上流階級の人々にかわいがられていました。

動物だけではなく、左側のひと際華やかな衣装に身を包んだ女性にも注目してください。前には喫煙具一式をまとめて置くたばこ盆があり、上流階級の女性たちの間でもたばこが楽しまれている様子が分かります。

歌川国芳『相州大山道田村渡の景』

歌川国芳『相州大山道田村渡の景』

こちらは、同じく歌川国芳が手掛けた『相州大山道田村渡の景』。大胆でダイナミックな構図、そして温かみを感じさせる人物描写で知られる歌川国芳らしさが随所に光る作品です。

画面には、山並みを背景に、どこかユーモラスな佇まいで動物にまたがる旅人の姿が描かれています。細部にまでこだわった筆致が、旅の空気感や人物の素朴な表情を際立たせ、風景全体に物語性を感じさせます。

よく見ると、旅人の1人が口にしているのは、『キセル』と呼ばれる、当時の喫煙具。何気ない仕草の中にも、江戸の暮らしが息づいています。

歌川貞秀『花競美人揃』

歌川貞秀『花競美人揃』

続いて紹介するのは、歌川貞秀による『花競美人揃』。華やかな着物に身を包み、洗練された髪型で装う吉原の花魁たちが色鮮やかに描かれた作品です。

画面の中には猫の姿も見られ、やわらかな雰囲気を添えています。

吉原遊廓をはじめとした遊廓は、江戸幕府公認の遊興地として栄え、多くの浮世絵の題材となりました。そうした作品には猫が描かれることも多く、当時の風俗や美意識をうかがい知る手がかりとなっています。

そして、中央に描かれた花魁が手にしているのは、喫煙具のキセル。装いの一部として、あるいは仕草の中にさりげなく取り込まれ、たばこが当時の暮らしの一部であったことを物語っています。

ミュージアムショップで浮世絵グッズをお土産に

たばこと塩の博物館のミュージアムグッズ

定番の絵葉書から一風変わった文具まで幅広いラインナップ

1階のミュージアムショップでは、たばこや塩にまつわるグッズ、所蔵品をモチーフにしたオリジナルグッズなどを取りそろえています。浮世絵にまつわるグッズもあり、ちょっとしたお土産にも喜ばれるはず。

たばこと塩の博物館のミュージアムグッズ

1シート 7,150円(税込)

さらに、ミュージアムショップでは『たばこと塩の博物館』の所蔵する浮世絵の複製も購入できます。

ショップのスタッフに声をかければ浮世絵と解説文が納められたファイルを渡してくれるので、気になった作品を選んで購入してみましょう。

自宅に飾れば、江戸文化に思いを馳せるきっかけになるはずです。

施設情報

施設名 たばこと塩の博物館
たばことしおのはくぶつかん
TOBACCO & SALT MUSEUM
住所 東京都墨田区横川 1-16-3
アクセス 本所吾妻橋駅A2出口から徒歩10分
  • 都営浅草線(A19)

押上駅B2出口から徒歩12分
  • 京成電鉄京成押上線(KS45)
  • 東京メトロ半蔵門線(Z14)
  • 東武スカイツリーライン(TS03)
  • 都営地鉄浅草線(A20)
電話番号 03-3622-8801
開館時間 10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日(祝日・振替休日の場合は開館。翌平日が休館日)
※館内整備、年末年始ほか、不定休あり
入館料 一般/300円(税込み)
※20名以上の団体利用の場合、200円(税込み)
満65歳以上/100円(税込み)
※20名以上の団体利用の場合、50円(税込み)
小・中・高校生/100円
※20名以上の団体利用の場合、50円(税込み)
障がい者手帳をお持ちの方(付添者1名含む)/無料(障がい者手帳などを要提示)
ウェブサイト https://www.tabashio.jp/index.html
パンフレット 日本語・英語・中国語・韓国語・スペイン語に対応
※美術館の概要パンフレットのみ
音声ガイド 日本語・英語・中国語・韓国語・スペイン語
※ガイド機レンタルの場合、デポジットとして現金で1,000円(税込み)

※施設情報は2025年8月時点のものです。