桜の名所として知られる、千鳥ヶ淵。都心にありながら自然を感じられる遊歩道や、ボートを楽しめるスポットなど、魅力がたくさん詰まったエリアです。
毎年春になると、お濠沿いに咲き誇る桜をひと目見ようと多くの人が訪れますが、実はそれだけではありません。
新緑がまぶしい夏や、紅葉に染まる秋など、四季折々の楽しみ方をご紹介します。

『江戸城』の名残を今に伝える千鳥ヶ淵
千鳥ヶ淵が位置するのは、東京都千代田区、皇居の北西側。都心とは思えないほど静かで、ゆったりとした時間が流れています。

春の千鳥ヶ淵 写真提供/一般社団法人千代田区観光協会
その歴史は江戸時代までさかのぼり、かつては1603~1868年の徳川幕府の時代に、江戸城の内堀の一部として利用されていた歴史的なスポット。
そして、『千鳥ヶ淵』という名前は、お濠を横から見た際のV字の形が、千鳥が羽を広げた姿に似ていることに由来しているといわれています。
歴史を感じながら歩く、九段坂の散策

千鳥ヶ淵へのアクセスは、都営新宿線、東京メトロ東西線、半蔵門線の3路線が便利。九段下駅で降りたら、2番出口から地上へ出ます。
階段を上がったその先に広がるのは、『牛ヶ淵』と呼ばれるお濠。
2025年8月の取材時には、お濠の一面に蓮の葉が広がり、ところどころに鮮やかなピンクの花が咲き、まるで水の上に浮かぶ庭園のような景色でした。

蓮の葉に埋め尽くされた『牛ヶ淵』
緩やかな九段坂を上っていくと、左手に『高燈籠』が見えてきます。
もともとは1871年に靖国神社の燈籠として設置され、1930年に現在の場所へと移されたものです。

『高燈籠』
このあたり一帯は、かつて東京湾の入り江だった場所。高燈籠は、当時ここを行き来していた船のための目印でもありました。
昔の東京湾の姿に思いを馳せながら、歴史的な風景を楽しんでみてください。
四季を感じる、千鳥ヶ淵緑道の散歩

千鳥ヶ淵緑道
九段下駅から歩いて5分ほど。都心の喧騒が少しずつ遠ざかるころ、千鳥ヶ淵緑道の入口にたどり着きます。
靖国通り沿いから北の丸公園にかけて整備された約700メートルの遊歩道は、まっすぐお濠に寄り添うように続いており、のんびり歩くのにぴったりのコースです。
両側にはソメイヨシノをはじめとする桜の木が約230本。春になると、枝先に淡い花が咲き、道全体がやわらかなピンク色に染まります。
例年3月中旬から4月中旬にかけては『千代田のさくらまつり』が開催され、多くの花見客でにぎわう、千鳥ヶ淵が誇る観光スポットです。

緑道にはところどころにベンチも用意されており、疲れたらひと休みするのにぴったり。
春は桜、夏は新緑、秋には紅葉と、季節ごとに表情を変える景観をゆっくりと楽しめます。
都心のオアシス、千鳥ヶ淵でボート体験

緑道の入り口からさらに5分ほど歩いた場所には、千代田区が運営する『千鳥ヶ淵ボート場』があります。
営業期間は3~11月までの9か月間。春の桜、夏の青葉、秋の紅葉と、四季折々の景色が訪れる人を出迎えます。

日本語、英語、中国語に対応した『千鳥ヶ淵ボート場』の看板
利用できるボートは、ローボートとサイクルボートの2種類。料金は30分500円、1時間1,000円です。
英語・中国語の案内表示もあり、海外からの観光客にも配慮されています。

ボートを利用する際は、まずスタッフに声をかけましょう。券売機の操作方法を丁寧に案内してくれます。
また、安全のため、12歳以下は必ずライフジャケットを着用し、15歳以下は保護者の同伴が必要です。

水上から眺める都心の景色は、歩いて見た風景とはまったく異なる魅力があります。
水面に揺られながら、緑と空に包まれた開放感たっぷりのひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか。
都心にいることを忘れるほど、心がほぐれる時間が待っています。

散策後におすすめ。梅干し専門店の和食処『紀乃家 茶寮』
散策の後は、少し足を休めながらお茶を楽しむのもおすすめです。
千鳥ヶ淵緑道の入口近くにある『紀乃家 茶寮』は、1964年創業の梅干し専門店『紀乃家』が手がける和食店。ランチはもちろん、カフェとしても利用できます。

『紀乃家 茶寮』の外観
紀乃家 茶寮
住所:東京都千代田区九段南2-2-8 松岡九段ビル 1階
Instagram:kinoya_saryou
看板商品の『紀州の雅』は、大粒の紀州梅を蜂蜜でじっくり漬けた甘い梅干し。
酸味が控えめでまろやかな味わいが特徴で、日本茶だけでなく紅茶にもよく合います。

(手前)『お菓子のような梅干し(紀州の雅)』 361円(税込み)、(奥)『和紅茶』 880円(税込み)
白米と一緒に食べる梅干しとはひと味違う、新しい楽しみ方を見つけられるはずです。
店内は、日本の伝統的な木工技術『組子(くみこ)』を取り入れた内装。釘や金具を使わずに木を組み上げて作られた格子模様が、落ち着いた雰囲気を演出します。

『紀乃家 茶寮』の内観
物販スペースでは梅干しの購入も可能。お土産にも、自宅でゆっくり味わうのにぴったりです。日本の伝統食である梅干しを、この機会に味わってみてはいかがでしょうか。
千鳥ヶ淵で自然と歴史を満喫しよう

秋の千鳥ヶ淵 写真提供/一般社団法人千代田区観光協会
千鳥ヶ淵には、都心にいながら自然に触れられる癒しのスポットが点在しています。
江戸時代の名残を感じられる史跡や、四季の移ろいを楽しめる緑道、そして水辺からの景色が楽しめるボート体験まで、さまざまな楽しみ方が可能です。
ぜひ、季節ごとの風景を味わいながら、千鳥ヶ淵でのんびりとした時間を過ごしてみてください。
施設情報
施設名 | 区営千鳥ヶ淵ボート場 くえいちどりがふちぼーとじょう Chidorigafuchi Boat Pier Operated by Ciyoda City |
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住所 | 東京都千代田区三番町2先
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アクセス |
九段下駅2番出口から徒歩9分
半蔵門駅5番出口から徒歩9分
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電話番号 | 03-3234-1948 |
開園時間 | 10:00~17:00(入園は閉園の30分前まで) |
閉園日 | 月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)、12~2月 ※強風・雨天の場合は臨時休業あり |
入園料 | 通常期500円/30分、1000円/1時間 観桜期800円/30分、1600円/1時間 |
ウェブサイト | https://www.city.chiyoda.lg.jp/shisetsu/koen/chidorigafuchi-boat.html |
その他 | 『千代田のさくらまつり』開催期間中のみ千代田区観光協会公式ウェブサイトから予約可能 |
※施設情報は2025年9月時点のものです。