東京駅の中の美術館 建築ファンも必見のその内側とは【東京ステーションギャラリー】

1日約50万人が行き交う、日本最大級のターミナル、東京駅。

この現役の駅舎の中に、100年以上もの記憶をそのままにとどめた美術館があることをご存じでしょうか。

その名も『東京ステーションギャラリー』は、建築そのものが展示の一部となる、特別な空間です。

東京ステーションギャラリーの館内

『東京ステーションギャラリー』の2階展示室 ©Tokyo Tender Table

改札を出た瞬間、煉瓦の時間旅行が始まる

『東京ステーションギャラリー』は、東京駅丸の内北口改札を出てすぐ右手。ほんの5秒足らずで、雑踏から一転、静寂と赤煉瓦に包まれた空間へと誘われます。

ここでは、ピカソやシャガールといった歴史的名画や、絵画・デザイン・写真とジャンルを問わず、多彩な企画展が開催されており、美術館としての機能はもちろん、空間そのものがアート作品のようです。

東京ステーションギャラリーのエントランス

『東京ステーションギャラリー』のエントランス

100年の歴史を刻む貴重な展示物

『東京ステーションギャラリー』の最大の見どころは、展示空間の壁そのもの。

100年以上前に積み上げられた赤煉瓦の構造を、そのままいかし、来館者を迎えています。

東京ステーションギャラリーの館内

『東京ステーションギャラリー』の2階展示室 ©Wakabayashi Hayato

東京駅は1914年、辰野金吾による設計のもと開業。明治政府が目指した西洋的近代化の象徴として、イギリスのクイーン・アン様式を取り入れた、赤煉瓦と白い窓枠の調和が美しい駅舎が誕生しました。

しかし1945年の東京大空襲で3階部分を失い、戦後は2階建てで営業を継続。

2003年の重要文化財指定を経て、2007年から始まった復原工事によって創建当時の姿が蘇り、2012年に再完成を迎えました。

創建時の東京駅舎模型

創建時の東京駅舎の模型

この再生された駅舎の一角にある東京ステーションギャラリーでは、煉瓦壁の記憶がそのまま残されています。

戦時中の火災で炭化した木製のブロック『木レンガ』や、工事に携わった職人が残したとみられる墨書きの文字。それらが『東京ステーションギャラリー』の1~2階の壁面に残されています。

黒く炭化した煉瓦

内装材で覆うことなく、構造をあらわにしたままの状態で展示されている当時の煉瓦

東京ステーションギャラリーの当時の煉瓦

煉瓦を縦にしてみると、『のし』と『熊さん江』と書かれているのが分かる

建築そのものが過去を物語るという貴重な体験ができるのは、『東京ステーションギャラリー』ならではです。

建築好きにもたまらない『東京ステーションギャラリー』

美術館の階段天井を見上げると、歴史あるシャンデリアがそっと光を放っています。

東京ステーションギャラリーのシャンデリア

開館当時の美術館のエントランスから移設されたシャンデリア

これは1988年の開館当時、中央改札口近くの旧エントランスに取り付けられていたもの。現在の場所に移設され、時代を超えて美術館を照らし続けています。

また、駅舎内のドーム天井には、干支の動物をかたどったレリーフが八方に配置されており、西洋風の建築にあえて日本的なモチーフを織り交ぜた辰野金吾の設計思想を感じさせます。

東京駅北口駅舎の天井ドーム

東京駅北口駅舎の天井ドーム

『東京ステーションギャラリー』の細部に目を向けると、美術館は単なる展示空間ではなく、日本近代建築の粋が宿る芸術作品そのものだと気付かされることでしょう。

さらに、『東京ステーションギャラリー』の館内に常設で展示されている、創建当時の建築資料や模型も見逃せません。

資料からは、辰野金吾の思想や、当時の建築技術の粋を垣間見ることができます。

東京ステーションギャラリーに展示されている建築資料

天井ドームのレリーフの型も展示されている

静かな回廊に展示された模型やパーツは、建築ファンにとってはたまらない宝の山。美術館を鑑賞するだけでなく、『建築を見る』『歴史に触れる』という楽しみも待っています。

建築に触れるプログラム『レンガ・タッチ&トーク』

企画展の開催期間、各会期中に2回ほど行われる参加型プログラム『レンガ・タッチ&トーク』では、美術館の建築的特徴をガイドの解説付きで学べます。

ツアーでは、実際に創建当時の煉瓦に触れることができ、視覚だけでなく触覚でも『建築を体感する』ことが可能です。

なお、2025年11月9日までは、企画展『カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語』を開催中。

数千年の歴史を持つ更紗のテキスタイルと、美術館の赤煉瓦空間が響き合う、印象的な展示が広がっています。

東京駅外観

丸の内北口側から見た東京駅 ©Yanagi Shinobu

東京駅丸の内駅舎は、日々進化する都市の中で静かにその姿を保ち続けています。

そんな場所で、展示作品に浸り、100年を超える建築の記憶との対話は、東京ステーションギャラリーで得られる、他にはない鑑賞体験です。

歴史と現代が共鳴する生きた文化財へ、ぜひ足を運んでみてください。

施設情報

施設名 東京ステーションギャラリー
とうきょうすてーしょんぎゃらりー
TOKYO STATION GALLERY
住所 東京都千代田区丸の内1-9-1
アクセス 東京駅(TYO)丸の内北口改札すぐ
  • JR山手線(JY01)
  • JR上野東京ライン(JT01)
  • JR宇都宮線(JU01)
  • JR京浜東北線(JK26)
  • JR京葉線(JE01)
  • JR高崎線(JU01)
  • JR中央快速線(JC01)
  • JR東海道本線(JT01)
  • JR横須賀線・総武線(JO19)
  • 秋田新幹線
  • 上越新幹線
  • 北陸新幹線
  • 山形新幹線
  • 東海道新幹線
  • 東北新幹線

東京駅(TYO)M12出口から徒歩3分
  • 東京メトロ丸の内線(M17)
電話番号 03-3212-2485
開館時間 火~木、土・日曜日10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
金曜日10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)、年末年始
※企画展の最終週・GW・お盆期間中の月曜日は開館
※展示替えにより不定休あり。詳細は各企画展の詳細ページを確認
入館料 企画展によって異なる
※詳細は各企画展の詳細ページを確認
ウェブサイト https://www.ejrcf.or.jp/gallery/
パンフレット 日本語に対応
※『煉瓦壁』についてのみ
音声ガイド なし

※施設情報は2025年9月時点のものです。