和菓子の中でも、ひときわ繊細で美しい存在とされる『上生菓子(じょうなまがし)』。
日本の四季折々の情景や花をモチーフに作られるその姿は、まさに『食べられる芸術作品』と呼ぶにふさわしい佇まいです。

『日本文化体験 庵an東京』では、上生菓子作りに加え、抹茶のお点前(おてまえ)まで体験できます。
日本の伝統を、見て・触れて・味わう、特別な時間を過ごしてきました。
まずは予約から!選べる5つの体験コース
『日本文化体験 庵an東京』では、和菓子や抹茶をテーマにした5つの体験コースが用意されています。
今回選んだのは、上生菓子作りとお点前体験がセットになった『抹茶2点体験』です。
所要時間は約1時間35分。費用は2,800円(税込み)で体験できます。
〇その他のコース
- 練り切り和菓子作り体験:1時間5分/1,760円(税込み)
- お点前体験:30分/1,160円(税込み)
- お干菓子作り体験:30分/1,660円(税込み)
- 抹茶3点体験:2時間5分/4,360円(税込み)
体験コースはすべて事前予約制で、ウェブサイトから簡単に行えます。
英語対応のページも用意されているので、海外からのゲストにも安心。
支払いは事前にクレジットカードまたは銀行振込で済ませるシステムです。

『日本文化体験 庵an東京』の体験教室の様子
神田駅から徒歩1分の好立地
会場となるのは、東京の神田にある、第2登栄ビルの3階。
JR山手線、JR京浜東北線、JR中央快速線が乗り入れる神田駅東口、または東京メトロ銀座線の1番出口から徒歩1分と、アクセス抜群の立地です。
エレベーターでビルの3階まで上がったら、入口で靴を脱いで入室。静かで落ち着いた和の空間が広がっていました。
和菓子作りにチャレンジ 季節ごとに変わるモチーフも楽しみ
今回の主役は、秋を感じさせる2種類の上生菓子。『桔梗(ききょう)』と『稲穂』をテーマにしたものです。

今回の体験教室で作る和菓子の説明用紙
和菓子のモチーフは二十四節気(にじゅうしせっき)に合わせて約2週間ごとに変わり、申し込み時に公式ウェブサイトで確認できます。
季節によっては栗や紅葉、冬にはサンタクロースを題材にしたモダンなアレンジ和菓子が登場することも。伝統の中に遊び心が垣間見えるのも、この体験の魅力です。
まずは素材と道具の説明から
今回使うのは、白いんげん豆のペーストである白あんと、小豆のペーストである黒あん。
いずれも京都の老舗和菓子店から取り寄せたこだわりの素材です。
道具一式も、和菓子職人さながらに本格的。

道具一式は『日本文化体験 庵an東京』が用意してくれる
最初に作るのは『桔梗』。白あんに植物由来の色素(くちなし)を加え、美しい青に染めていきます。
くちなしの色素は、化学反応によって青、赤、黄の3色を引き出せるのだそうです。
餡を練っては畳み、また練る。この工程だけでも、じんわり集中力が高まっていく感覚がありました。

白あんを染めていく工程
難関!包餡と『貼りぼかし』のテクニック
続いては『包餡(ほうあん)』と呼ばれる、あんこを包む作業です。
青く色付けた餡で黒あんを包み込みますが、均等に薄くのばすのがとにかく難しい工程。
インストラクターいわく、職人さんでも習得に1〜2年かかるといいます。

『包餡』の工程
包んだら、白あんを表面に貼ってぼかす『貼りぼかし』という工程へ。
人差し指でトントンと優しく叩きながら、自然なグラデーションを作っていきます。

『貼りぼかし』の工程
仕上げに三角棒で筋を入れ、花びらの先端を尖らせたら『桔梗』の完成です!

仕上げの、三角棒で筋を入れる工程
続いては「稲穂」。色と質感が勝負のポイント
次は、秋の象徴である『稲穂』作り。
白あんと黄色く色付けた餡をそれぞれ穴あきスプーンに乗せ、親指で押し出し、そぼろ状にしていきます。
和菓子作りの技法を実際に見て学べるのが、体験コースの魅力です。

餡をそぼろ状にする工程
そぼろ状にした後は、箸で黒あんにそぼろ状の餡をふんわりとつけていきます。
白と黄色のバランスを見ながら、まるで稲穂がふくらんでいくように。力を入れすぎると潰れてしまうので、優しく、丁寧に仕上げます。

黒あんにそぼろ状にした餡をつけていく工程
2つの作品が完成した瞬間は、思わず笑顔になってしまうこと間違いなし。
途中、難しい工程もありましたが、インストラクターが手順を分かりやすく説明してくれたため、スムーズに楽しく体験できます。

(左)稲穂(右)桔梗
後半は、お点前体験で抹茶を味わう
和菓子作りの後は、少し休憩を挟んでお点前体験へ。お点前とは茶会などで、茶道の作法にのっとり、抹茶を泡立て飲める状態にすることです。
体験教室では、茶道の基本を学びながら、自分の手で抹茶を点(た)てていただきます。

まずは茶碗の正面を見極めることからスタート。
絵柄がある場合はその面が、無地の場合なら、底の刻印の位置で判断するそうです。
初歩の一歩ですが、茶道の所作にはすべてに意味があるのが興味深いところ。
お湯を80〜90度に冷ましたら、抹茶と一緒に茶碗へ。
茶筅(ちゃせん)を3本の指で持ち、上下に動かして泡立てていきます。
時間はおよそ20秒。シンプルな動作のように見えて、なかなか思うように泡立たないのがまた楽しい時間です。

茶筅を使い抹茶を点てる工程
お茶をいただく作法も美しい
抹茶を点てたら、いよいよいただく時間です。
茶碗を右手で持ち、左手を下に添え一礼。口をつける前に、茶碗を時計回りに2回、計180度回します。これは「最も美しい正面には口をつけない」という、日本の美意識から来ているのだそう。

体験教室ではお茶席での作法も学べる
3回もしくは4回に分けて飲み干したら、最後に指で飲み口を拭き、和菓子を乗せていた懐紙(かいし)でそっと拭って終了。
作法の一つひとつに意味があり、丁寧に振る舞う所作そのものが美しい体験でした。

最後に指で飲み口を拭く様子
海外からのゲストも安心 英語対応のクラスも用意
海外からの参加者向けに、インストラクターは可能な限り英語で対応してくれます。
さらに、確実に英語対応を希望する場合は『英語ガイド付き専用クラス(1時間5,500円、30分追加ごとに3,300円)』を予約することも可能です。申し込み時にオプションとして選べます。
今回一緒に参加したイギリスからの旅行者は、箸でそぼろ餡を乗せる工程が一番難しかったそう。
しかし、完成した和菓子を見て、とても満足げな表情を見せていました。
完成した和菓子は、その場で抹茶と一緒にいただけますが、1個100円(税込み)で持ち帰り用の容器も販売されているので、お土産にするのもおすすめ。旅の思い出にぴったりです。

目の前で講師のスタッフが茶葉をひく様子も見学できる
和菓子と抹茶という、日本の伝統文化の粋をギュッと詰め込んだこの体験。
見た目の美しさだけでなく、素材の味わい、手作りする喜び、そして作法に込められた意味まで、すべてが学びと感動に満ちていました。
東京を訪れたら、少し足を伸ばして『和の美しさ』に触れてみてはいかがでしょうか。
施設情報
施設名 | 日本文化体験 庵an東京 にほんぶんかたいけん あんとうきょう AN TOKYO Japanese Culture Experience |
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住所 | 東京都千代田区鍛冶町2-2 第2登栄ビル3階
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アクセス |
神田駅東口すぐ
神田駅1番出口すぐ
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電話番号 | 非公開 |
開館時間 | 7:30~20:00 ※予約受付時間は10:00~17:00 |
休館日 | なし ※不定休あり |
ウェブサイト | https://tokyo.nipponbunkan.com/ |
その他 | スーツケースを置くスペースなし |
※施設情報は2025年9月時点のものです。