上野の繁華街の一角に、ひっそりと看板を掲げるかき氷専門店があります。
夜はバーとして営業している空間を間借りした、その名も『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』です。
提供されるのは、まるで口の中で雪がほどけるような、ふわふわのかき氷。
手間と時間をかけたこだわりの純氷を、丁寧に削って仕上げるかき氷の食感は、極上です。

『宇治抹茶金時(100円の『倍ミルク』トッピング込み)』 1,000円(税込み)
『生氷』とは?唯一無二の食感を生み出すこだわりの数々
『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』で使われているのは、『生氷(なまごおり)』と名付けられた特別な氷です。
氷を販売する専門店の4代目の店主が、確かな目利きを受け継ぎ、かき氷専門店として新たな一歩を踏み出したのは2017年のことでした。

『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』のかき氷を制作する様子
『生氷』は、完全に不純物を取り除いた水をマイナス10℃の環境下で48時間以上かけて、凍らせて作るところから始まります。
時間をかけて凍らせることで、雑味がなく、透明度の高い極上の氷が生まれるのです。
そして、製造された135kgの大きな氷柱から、熟練の職人である4代目店主が、最良の部分を目利きして仕入れます。
マグロに赤身、中トロ、大トロがあるように、氷にも部位があるというのが『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』の考え。
そこからさらに厳選された氷は、まさに『氷のシャトーブリアン』と呼びたくなるような特別な存在です。

商標登録されている『生氷』
『生氷』と呼ぶ条件は、まだあります。その理由が、徹底した温度管理です。
製氷から提供のため『生氷』を削る瞬間まで、すべての工程でマイナス10℃を保ち、わずかな温度変化も許しません。
さらに、仕入れた『生氷』はその日のうちに使い切るため、削った氷のみを無料で追加できる『追い氷』と呼ばれる独自のサービスを取り入れるこだわりようです。

『追い氷』の量は注文者自身が決められる
無料のサービスのため、お得さが先行してしまいがちですが、『追い氷』こそ、氷そのものの味や食感をじっくり楽しんでもらうための工夫。
さらに「追い氷をお願いします」のひと言が、店を訪れた人との間にコミュニケーションを生む狙いもあるのだそうです。

シロップの追加は『追い氷』に含まれない
『生氷』の魅力をより生かすために、『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』ではかき氷の盛り付けにも独自のこだわりがあります。
削りたての繊細なくちどけを大切にするため、削った氷は手で押さえたり、まとめたりせず、そのままふわりと積み重ねて仕上げていきます。
ボリュームを出すほか、崩れにくくするために手で成形するスタイルが多い中で、あえて形を作らないこの方法は、まさに『生氷』の食感ありきの盛り付け。
ひと口目から最後のひとさじまで、軽やかにほどけていくような食感が楽しめます。

途中で形成しない『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』ならではの作り方
『生氷』という名前に込めたのは、こんなにも繊細で美しい氷があることを、もっと多くの人に知ってもらいたいという想い。
まるで雪を食べているかのような、ふわりとほどける口どけは、多くの人を魅了してやみません。
その証拠に、特に夏場は店前に長蛇の列が。並んでても食べたいと思わせる魅力が、『生氷』にはあります。

『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』で注文必須のメニュー
『生氷』という極上の素材があるからこそ、その魅力を最大限に引き出すためのシロップ作りにも、並々ならぬこだわりが詰まっています。

生のイチゴの果肉を使って作るシロップ
これまでに『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』が考案したシロップは、なんと1,000種類以上。
氷の特徴を知り尽くしているからこそ、素材の持つ甘みや酸味に対して、加水の有無や煮詰め時間、砂糖の種類まで緻密に調整しているのです。
例えば店の定番メニューである『大野屋のいちごみるく』は、果肉の存在感を残しつつ、甘さと酸味のバランスを丁寧に調整。
仕上げにかける自家製練乳が、全体にやさしいコクを加えています。

『大野屋のいちごみるく』 800円(税込み)
こちらも定番の『宇治抹茶金時』では、まるで点てたてのような濃厚な抹茶の風味。
氷がとけることで味が薄まってしまいがちですが、『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』の仕上がりはひと口目から最後まで味わいがぶれません。
別途100円(税込み)で注文できる有料トッピングの『倍ミルク』もプラスすれば、やわらかな甘みが加わり、味わいに変化をもたらします。

『宇治抹茶金時(100円の『倍ミルク』トッピング込み)』 1,000円(税込み)
そして忘れてはならないのが、『大野屋四代目のみぞれ金時ミルクに塩』。『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』特製のこの1品は、驚くほどさっぱりとした口当たりが特徴です。
そこに注文者自身がその場で加える塩が、全体の甘さを引き立てるという意外性。
シンプルなようでいて、氷を知り尽くした店主だからこそできる味わいの構築です。

『大野屋四代目のみぞれ金時ミルクに塩』 900円(税込み)
味わいは本格的ながら良心的な価格のかき氷の数々
『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』が営業しているのは、『ヒダリキキ』と呼ばれる店舗の1階。
店内はカウンターのみの小さな空間で、バーとしての雰囲気をそのまま生かした内装です。
そこに手書きのメニューや、氷を削る機会の音が溶け込み、どこか懐かしい空気が漂います。

2025年7月時点のメニュー
並ぶかき氷は種類が豊富で、珍しいフルーツを使った変わり種もちらほら。
ただし、今回ご紹介した『大野屋のいちごみるく』や『宇治抹茶金時』は通年で登場することの多い定番です。
迷った時の最初の1杯として、安心して選べます。
価格は900円程度から、高くても1,000円ほどと、これだけのクオリティにしては驚くほど良心的。
季節が変われば、ラインナップも少しずつ表情を変えていきます。
一度訪れたら、きっとまた『生氷』を求めて足を運びたくなる。そんな、ひと夏の記憶に残る店です。

『上野かき氷専門店四代目大野屋氷室』の外観
店舗情報
店名 | 上野かき氷専門店四代目大野屋氷室 うえのかきごおり せんもんてん よんだいめ おおのやひょうしつ Ueno Kakigori Senmonten 4daime Ohno-ya Hyoushitsu |
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住所 | 東京都台東区上野6-14-1 1階
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アクセス |
上野駅(UEN)広小路口から徒歩2分
京成上野駅正面口から徒歩3分
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電話番号 | 非公開 |
予約 | 不可 |
支払い方法 |
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営業時間 | 12:00~17:00(LO) |
定休日 | 10~12月の間のみ月曜日 ※不定休あり |
席数 | カウンター9席 |
喫煙・禁煙 | 全席禁煙 |
ウェブサイト | https://www.instagram.com/yondaime.2017.7.22/ |
その他 |
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※メニューの内容や料金、店舗情報などは2025年8月時点のものです。