日本の鍋料理を探る 多様な具材とスープで魅せる東京の鍋料理5選

日本の冬の定番料理といえば、鍋。野菜、肉、魚、多様な具材を煮込んで熱々の状態で頬張れば、身も心も温まります。

家庭の味として親しまれ、地域ごとに独自の味わいや具材がある鍋のバリエーションは実に豊か。

寄せ鍋、すき焼き、しゃぶしゃぶ、水炊き、キムチ鍋など、それぞれに魅力と歴史があります。

鍋料理を知るための基礎知識

鍋料理といっても、簡単に紹介するのは難しい奥深い料理です。

しかし、鍋料理の基礎知識を知れば、店で食べるのも、自宅で実際に作るのも、さらに楽しめること間違いなし。

より一層、鍋料理を楽しむための基礎知識をご紹介します。

鍋料理の起源は江戸時代にあり?

調理器具としての鍋が誕生したとされるのは、土器が発明された縄文時代。しかし、当時は煮込む際に使う調理器具と位置付けられていました。

時代が進み、江戸時代に入ると、鍋で調理してそのまま取り分けるスタイルが一般的に。

それだけではなく、1つの鍋を複数人で囲んで食べる文化も広まったと考えられています。

明治時代に入ると、ガスコンロが登場したことにより、さらに鍋料理の立ち位置にも変化が生まれました。

囲炉裏が主流だった江戸時代に比べ、ガスコンロが普及した明治時代には、鍋料理を卓上で調理することが可能に。

家庭でも鍋料理を楽しめるようになったことで、現代まで続く、家族や友人で1つの鍋を囲むスタイルが一気に普及したといいます。

鍋料理は大勢で食べるもの?それとも1人向け?

鍋料理の歴史を知ると、鍋は大人数で囲んで食べるものと思うかもしれませんが、食事のスタイルが多様化した現代では、必ずしもそうとは限りません。

カウンター席のみの『ひとりしゃぶしゃぶ七代目松五郎

新宿にある『ひとりしゃぶしゃぶ七代目松五郎』はカウンター席のみで、1人1鍋の食事スタイル。渋谷にある『しゃぶしゃぶれたす』もまた、1人1鍋でしゃぶしゃぶを味わえます。

食事スタイルの変化に合わせ、選択肢が増えたのは、現代ならではの鍋料理の進化といえるでしょう。

しかし、大人数で味わうのも、やはり鍋料理の醍醐味です。今日でも多くの店で、鍋料理は2人前からの注文が基本となっています。

カウンター席のほかテーブル席もあるがコンセプトは1人1鍋の『しゃぶしゃぶれたす』『しゃぶしゃぶれたす

鍋料理の具材とレシピは:代表的な鍋料理

すき焼き、しゃぶしゃぶ、果てはおでんまで、鍋料理は総称であり、種類は多岐にわたります。

具材やスープの組み合わせにより、種類が無限に広がるのは、鍋料理の魅力。

使う具材やスープに明確な決まりがない柔軟さが、家庭ごとの味が生まれる理由にもなっているのです。

一方で、鍋料理にはいくつかの代表的な種類が存在します。

  • 水炊き:博多発祥の鍋料理。鶏肉を水から煮出してスープをとるためコクがある。具材は野菜や鶏肉が中心。
  • しゃぶしゃぶ:スープには、水もしくは薄味の出汁を使うが、近年ではバリエーションが豊富。薄切りにした肉や野菜をスープにくぐらせ、ゴマダレやポン酢につけて食べる。
  • ちゃんこ鍋:相撲に起源をもつ鍋。鶏からとった出汁をベースに、味を付けたスープが主流。味は醤油、味噌、塩の3種類が多い。鶏肉を基本とするも、具材は豚肉、牛肉、魚介など多岐にわたる。
  • 寄せ鍋:魚介からとった出汁を使うほか、場合によっては醤油、味噌、塩などで味をつける場合も。具材は肉、魚介、野菜などさまざま。
  • キムチ鍋:現代的な鍋料理の種類。辛みのあるスープに、キムチのほか、さまざまな具材を煮込んで作る。
  • すき焼き:江戸時代に生まれたとされる鍋料理。醤油、みりん、砂糖で作る『割下』と呼ばれるスープを使うのが特徴。具材は牛肉が基本だが、地域によっては豚肉の場合もある。
  • おでん:ダイコン、卵、こんにゃく、練り物などを出汁で煮込んで作る。出汁は地域や店舗によって個性が出る。

伝統から革新まで、東京都内のベスト鍋料理5選

すき焼きは日本で昔から親しまれてきた鍋料理であり、専門店ともなると100年以上の歴史を誇る老舗も珍しくありません。

創業時から変わらない具材のラインナップ、レシピを守り続け、伝統を継承しています。

伝統的な鍋料理が今日まで存在する一方、現代的なトレンドを取り入れた新しい鍋料理も。

多様な飲食店が集まる東京で発見した、ベスト鍋料理をご紹介します。

多彩なスープで味わうしゃぶしゃぶ:『モーモーパラダイス』

しゃぶしゃぶは、水もしくは薄味の出汁を使う場合がほとんどでした。

しかし、時代とともにスープの選択肢が広がり、バリエーションの豊富さを押し出す店も増えています。

海外にも店舗を展開している、『モーモーパラダイス』の新宿東口店では、全4種類のスープをラインナップ。

あっさりとした風味から、コク深い濃厚なスープまで、訪れる人の幅広いニーズに応える奥行の深さです。

(左)『しゃぶしゃぶ』スープ(右)『すき焼き』スープ

あっさりとした口当たりが好みなら、選ぶべきは牛テールからとった出汁の『しゃぶしゃぶ』。

濃厚な味を好むなら、添加物を使用しない天然醸造醤油と沖縄県産の黒蜜から作った『割下』を使う『すき焼き』や、豚、魚介、野菜と多層なうまみからなる『塩とんこつ』がおすすめです。

個性的なスープなら『旨辛キムチ』。まろやかな辛みが、食材の風味にアクセントを加えてくれます。

和牛、ウニ、イクラと豪華具材が勢ぞろい:『土鍋ご飯 いくしか』

定番の具材こそあれど、既存のイメージにとらわれない自由な発想で、新しい味を追求できるのが鍋料理。

渋谷に店舗を構える『土鍋ご飯 いくしか』は、海の幸、山の幸を融合させた、今までにない鍋料理を提供しています。

土鍋ご飯 いくしか』の『極上牛すき御膳』

和牛をメインに、ウニとイクラを散らした『極上牛すき御膳』は、セットの醤油ベースのタレと煮込むことで濃厚な味わいに。

ミディアムレアで仕上げた和牛で、ウニとイクラを巻いて食べれば、至福のひと口にうっとりすること間違いなしです。

『極上牛すき御膳』

SNS全盛期だからこそ誕生した映える鍋:『しゃぶしゃぶ本舗 新宿 うさぎや』

『しゃぶしゃぶ本舗 新宿 うさぎや』のしゃぶしゃぶは、まさに現代を象徴する鍋料理です。

数種類用意されているスープから『昆布』を選ぶと、550円(税込み)で、かわいらしい『うさぴょん出汁』を追加できます。

火にかけると『うさぴょん出汁』が徐々に溶けて、しゃぶしゃぶのスープになるという仕組みです。

フォトジェニックな見映え

『昆布』はその名の通り、昆布からとった出汁のため、肉や野菜など食材本来のうまみを損なわず、後味はさっぱり。

また『うさぴょん出汁』も昆布出汁をベースに使って作られているため、スープのコクがぐっと増します。

日によっては売り切れてしまうこともあるという『うさぴょん出汁』は、事前の予約がおすすめです!

元力士が生んだ本物のちゃんこ鍋:『料亭 時葉山』

今では一般にも広く親しまれているちゃんこ鍋は、相撲力士が所属する相撲部屋で誕生した鍋料理です。

相撲力士が所属する相撲部屋で食べられていた料理全般が『ちゃんこ』と呼ばれていた中、鍋料理は、一般に周知されるほど有名に。

相撲部屋の鍋料理を指してちゃんこ鍋と呼ばれるようになり、大相撲の興行が行われる両国国技館がある両国駅周辺には、専門店が軒を連ねます。

料亭 時葉山』の純和風の店内

相撲の勝敗を分けるルールの1つに、手が地面に触れることがあり、縁起をかついで、スープの出汁や具材は2本足の鶏を使うのが基本とされてきました。

元力士の時葉山が創業した『料亭 時葉山』でも、基本に忠実に、鶏もも肉と鶏団子をメインに、旬の野菜がたっぷりと具材として入っています。

栄養を豊富にとれるよう、ちゃんこ鍋は具沢山

広く親しまれるようになった現在では、豚や牛、魚介など店によって具材はさまざまです。

しかし、相撲部屋でもともと食べられていたちゃんこ鍋と聞けば、より興味をそそられるというもの。

趣を感じる日本家屋の中でいただく、本格的なちゃんこ鍋は絶品です。

トッピングで変わる味わい:『ちょいおでん』

冬に食べたくなる鍋料理といえば、やはりおでんでしょう。

冬になるとコンビニでも販売されるおでんは、日本の冬の風物詩といっても過言ではない存在です。

店の個性がつまったスープで煮込んだ具材は野菜に肉に魚介まで、種類豊富。大鍋の中から自由に選ぶ楽しさも、おでんの魅力です。

ちょいおでん』のおでん鍋

東京、神奈川、秋田に店舗を展開する『ちょいおでん』では、伝統的なスタイルを軸に、トッピングというエッセンスを加えた創作的なおでんを提供しています。

既存の具材は、ダイコンや卵、練り物ならはんぺんと定番がずらり。

そこに各110円(税込み)で注文できる『明太バター』『ブルーチーズ』『ジェノベーゼ』を加えると、たちまち洋風な味わいへと変化します。

高級魚のハモからとった出汁をベースにしたスープは、すっきりとした後味ながらうまみを強く感じる後味。

トッピングの『明太バター』『ブルーチーズ』『ジェノベーゼ』とも相性がよく、自分好みの味わいを追求できます。

『ブルーチーズ』をトッピング

伝統を受け継ぎつつも、流行を取り入れながら、進化し続ける鍋料理。

冬の定番料理ではあるものの、1年を通していつでも食べたくなる魅力があります。

※記事の情報は2025年6月時点のものです。